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「半沢直樹」の世界を鵜呑みにしないでくださいね [日記・雑感]

テレビドラマ「半沢直樹」の視聴率がついに30%を超えたという話でしたが、実は私はこのドラマを見ていませんでした。

もともと、ドラマを見るのは、大河ドラマかごく一部の歴史物や経済物くらいで、ドラマのスタート時には世間的にもあまり注目されていなかったようなので、私のウォッチリストには上がっていませんでした。

それで、評判が聞こえてきてからも、最初から見ていないので、このドラマを見ることに二の足を踏んでいたのですが、知り合いから、ネットで過去の回も見られると教えてもらったので、最初から見はじめ、昨日ようやく第2回を見終えたところです。

番組のあらすじは、私が説明する必要もないと思いますが、堺雅人演じる「半沢直樹」という東京中央銀行大阪西支店の融資課長が、支店長や本店の幹部連中の妨害をかいくぐって、困難な債権回収に奔走するというもので、銀行内の不条理なルールを蹴散らして結果を出す半沢課長の言動が、多くの視聴者の溜飲を下げていることがこの番組がヒットしている要因なのだと思います。

「やられたらやり返す。倍返しだ!」
という半沢の決め台詞も、今年の流行語大賞にノミネートされることはほぼ確実な情勢です。

 ■ 法律の専門家マスダが見る「半沢直樹」

そんなドラマの面白さに水を差すつもりはないのですが、法律の専門家から見て「これはどうなの?」ということが早くも第2回に出てきたので、私たち弁護士のところに債権回収の依頼に来られた方がこのドラマを鵜呑みにして、簡単に債権回収できると思われては困るので、私が疑問に思ったことを少し書かせてもらいます。

第2回は、半沢の銀行が5億円を融資した直後に「計画倒産」した倒産会社の元社長が、下請業者への支払いを水増ししてその金で私腹を肥やしていたことが分かり、その個人資産の中に5000万円で購入したハワイオアフ島の別荘があることを見つけた半沢が、国税査察官を出し抜いて、この別荘から債権を回収しようと奔走するというストーリーでした。

ハワイに別荘があるということを突き止めた半沢は、本店の友人を通じて法務部長に依頼してハワイの資産から債権の回収をしようとしますが、時を同じくしてこの事実を突き止めた国税査察官が先に物件を押えてしまうかという息詰まる先陣争いに、ハラハラしながら見守った視聴者も少なくなかったと思います。

私もこのストーリー展開は面白く見てはいたのですが、ドラマを見ながら思っていたのは
「半沢が国税を出し抜いて5000万円を回収するための方法としてどういう方法があるのだろうか。」
ということでした。

ドラマの後半で、本店勤務の友人から「ハワイの別荘を押えた」という連絡をもらった半沢は、その電話を切った後部下に「5000万円回収だ!」と勝利宣言しましたが、この時点で銀行は何をしていたのでしょうか。

後の展開を見ると、この時点では、銀行は「不動産仮差押命令」の申立書すら裁判所に提出していなかったことが分かりましたので、友人が言った「ハワイの別荘を押えた」というのは、「ハワイの別荘を特定できた」という意味でしかなかったことが分かります。

 ■ 本当に半沢直樹は国税を出し抜いた?!のか

これでは、法的な意味での債権の回収はスタートラインに立った程度の状況で、これで国税を出し抜いたとは到底言えないのですが、その辺りのことを一般の視聴者がどのように受け取ったのか非常に不安なところです。

国税査察官の方も、どんな権限でこの別荘を押えたというのか、これも実は良く分からないところがあります。査察官は、調査する権限はあるものの、納税者の資産を差し押さえるのは税務署長の権限で、それも脱税の事実を突き止めて、納税額の「更正」という手続を行い、その納付の告知をしても納税がされたかったときにはじめて「滞納処分」による「差押」がなされることになるので、この時点でいきなり別荘を抑えるということが本当にできるのかはとても疑問です。(おそらくできないと思います。)

そして、一番の問題は、半沢があれほど頑張って国税を出し抜いて、仮に「不動産仮差押命令」を獲得できたとしても、銀行は国税には勝てないということです。

国税徴収法140条は「滞納処分は、仮差押又は仮処分によりその執行を妨げられない。」と明確に規定しています。「仮差押」というのは、債権の回収のために、債務者の資産が散逸しないように保証金を積んで仮に差押えるというものですから、これだけでは回収は緒に就いたばかりです。そこまでやっても、後から国税の滞納処分がなされたときには「仮差押」は国税に負けてしまうのです。

つまり、半沢が頑張ってハワイの別荘を国税に先行して仮差押できたとしても、そこから債権を回収できる可能性はほぼゼロというのが、法律的な結論ということになります。

 ■ 知っていますか?債権回収のルール~早い者勝ち!というわけではありません。

債権には法律的に優先関係があって、早い者勝ちで回収できるものは意外と少ないのです。

債務者が破たん状態になる前であれば、キャッシュで回収できれば早い者勝ちということはありますが、先に差押をしたとしても、後に競売で配当される前に他の債権者から「配当要求」や「交付要求」がなされると、法的に同順位の債権者であれば、債権額の比率で配当を受けるだけですし、租税債権のように一般の債権に優先するものがあれば、いくら先に差押えたとしても、後から横取りされてしまうことは避けられないのです。

こういう債権回収のルールを知っている人が見ると、半沢は何のために奔走していたのかと思うと同時に、天下のメガバンクの融資課長がこの程度の常識も知らないのかという話にもなるのですが、それは置いておいて、半沢直樹のキレのある啖呵を聞いて単純にエンターテインメントとして楽しむのは悪くはありません。

一般の視聴者の方たちも、これはあくまでもドラマで、現実の債権回収はもっと大変だということを少しだけ頭に入れておいていただけると、私たちも多少は仕事がしやすくなるのではないかと思って、明日からも続編を見ていきたいと思います。

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