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弁護士業界勝手に解説 「法律の裏ワザ」 [「弁護士業界」勝手に解説]

弁護士は法律のプロとして知られていますが、法律のプロというと「法の抜け道」を知っている人と誤解されることがあります。

●弁護士は「法の抜け道」を知っているのか?
法律を知っているということから、法の不備があれば、そのことを知ったうえで「抜け道」もアドバイスしてもらえると思われるのかもしれませんが、法の不備があるからといって、弁護士がその不備を利用して社会常識に反するアドバイスをするかというと、そのようなアドバイスをすべきと考える弁護士はほとんどいないでしょう。

大学のカリキュラムで法学という科目がありますが、そのなかで「法と道徳」というテーマが取り上げられることがあります。「法は最低限の道徳」とも言われ、道徳的規範のうち国家・社会によって強制してでも守らせなければならないものが法律だというのがその理由です。

したがって、法律に反していないからそのことをやって良いと考える前に、健全な社会常識に照らして、そのことをすることが正しいことなのかどうかということが判断の大前提として必要というのが私の考えです。ということで、私は、20数年の弁護士生活の中で「法の抜け道」をアドバイスしたことはありません。

一方で、法律を杓子定規に適用したのでは、依頼者の正当な利益を守れないということもあります。そのようなときには、自分の持っている法的知識を総動員して、別の手法を利用してでも依頼者の正当な利益を守る方法はないかと考えます。これは、前提としてその依頼者の「正当な」利益は擁護されるべきという考えがあるからです。

最近、法科大学院の学生や司法修習生と事件の見通しなどに関する話をしていると、結論の相当性よりも、形式的な法律解釈や先例となる判例が無いからといった理由から「無理です。」と簡単に結論を出す傾向が気になるのですが、そこには「結論として、依頼者の利益は守られるべき。」という視点はありません。

これでは、裁判官は務まるかもしれませんが、弁護士としてはやって行けません。弁護士は「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命としていますが、依頼者の正当な利益を守るのはまさにこの使命に適うことですから、そのためには、裏ワザであっても使える武器は活用すべきものだというのが私の考えです。

そこで、今回は法的テクニックとして使える裏ワザについて、少しご説明します。

●法的テクニックの裏ワザ~土地の名義変更
もう十数年前になりますが、地方のある協同組合から不動産の登記に関する依頼を受けたことがあります。その数十年前に個人から購入した土地の名義変更がなされていなかったので、その名義変更手続をしたいという内容でした。

土地の購入ですから、名義変更をするとすれば、売主から名義変更に必要な書類を受け取って「売買」を原因とする所有権移転登記をすれば足りるのですが、売買契約時にすぐに所有権移転登記をすることができなかったのは、その土地の名義について便宜上第三者の名前を借りていたからということでした。

このような事件の依頼を受けたときに、法律を杓子定規に適用しようとすれば、その土地が登記名義にかかわらず実質的に売主の所有物であったことを証明して、売主に対して登記上の所有者から名義変更(「真正な登記名義の回復」という登記原因になります。)をしてもらい、それから買主に「売買」を登記原因として名義変更してもらうということになりますが、何しろ数十年前のことですから、売主も名義上の所有者も既に亡くなっており、その相続人は事情を知りません。

そうなると、権利変動の実態を登記に反映させるためには、事情を知らない両方の相続人に対して、この間の経緯を理解してもらって、全員から同意を取り付けることが必要になりますが、調査したところ相続人の数は全員で100名近い数になります。この中の一人でも同意しない、あるいは連絡が取れなくても手続をすることはできませんので、事実上この方法は無理と判断せざるを得ません。

そのような事情をクリアする裏ワザとして、時効を利用するということがあります。不動産は、所有の意思を持って占有し、自分のものと信じていれば10年、他人のものと分かっていても20年占有することで所有権の取得時効が完成します。

取得時効は前の持ち主から所有権を承継するものではなく、時効によって取得者が原始的に所有権を持つことになるので、前の所有関係がどのように変動していても関係ないという特徴があります。ですから、登記名義人と売主との関係を証明することができなくても自己の所有権を主張することができるのです。

この場合には、現在の所有者は、登記名義人の相続人全員を相手方にして時効取得を原因とする所有権移転登記を求めることになりますが、もともと登記名義人の相続人はそのような土地の所有権があったことすら知りませんので、きちんと事情を説明すれば理解してくれる可能性が高く、仮に争われても取得時効が完成していることは疑いのないところですから、任意に交渉しても応じてくれる可能性はありますが、説得にかける時間と労力はバカになりません。

そこで、相続人を被告として所有権移転登記訴訟を提起して、被告になった相続人の皆さんには、個別に事情を説明して「裁判には出頭する必要がないということと、出頭せずに原告勝訴判決が出たとしても、被告に不利益はないということ」を説明するという方法をとりました。また、通常は、訴訟を提起する場合「訴訟費用は被告の負担とする。」という判決を求めるのですが、ここではあえてそのような請求もせずに、被告に一切負担がかからないという方法を取ることで理解を得ることができました。

この土地の受任時の時価は200万円程度でしたが、この手続ではその時価額とほぼ同額の実費がかかってしまいました。依頼者が公益性の強い協同組合で、権利関係を明確にしておく必要があったので依頼者はこの金額を支払いましたが、実に馬鹿げた出費です。

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このようなことになったのは、数十年放置している間に、相続が複数回繰り返されて、関係者が膨大な数に上ったからです。私たち弁護士は、将来相続が絡んできそうな案件については、「解決を先送りしない方が良いですよ。」というアドバイスを良くするのですが、この事案のように、先送りしている間に、費用のことを考えると権利を放棄した方が良いというくらいまで複雑になってしまうこともありますので、相続がらみの問題を抱えている方は、早めに専門家に相談した方が良いですよ。


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