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「弁護士業界」勝手に解説-「為替デリバティブ損失とその解決」(3)・最終回 [「弁護士業界」勝手に解説]

前回に引き続き,為替デリバティブのお話の続きですが、この回では主に手続のことを解説します。

●銀行側の思惑~できるだけ穏便に解決したい
為替デリバティブの被害に遭う企業は、銀行にとってはお得意様であり、リスクヘッジを働きかけるくらいですから、基本的には収益の上がっている企業です。そのため、銀行の側も、顧客とのトラブルを大きくせずに、できるだけ穏便に事を解決したいと考えています。

しかし、前回解説したような仕組みで顧客の側の損失が経営基盤を脅かすほどの規模になると、顧客の側も損害の全てとは言わないまでも幾分の補てんはしてもらわないと収まりが付かないということになります。

銀行の側も、そのような顧客の意向は十分に理解できるので、何とか対応したいのですが、このような金融取引で銀行の一存で顧客に発生した損失を返済するようなことをすると、金融商品取引法39条で禁じられている「損失補てん」に当たることになります。

金融商品取引法が損失補てんを禁止しているのは、市場における公正な価格形成が阻害されることになることと、金融商品取引業者が特定の顧客に便宜を図ることになり、投資家の信頼を損なうことになるからです。

ただし、同条3項で、『金融事故(金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人の違法又は不当な行為であって当該金融商品取引業者等とその顧客との間において争いの原因となるものとして内閣府令で定めるもの)による損失の全部又は一部を補てんするために行う場合(実質は事故による損害賠償になります。)には損失補てんが許される』とされているので、為替デリバティブの損失回復も、この金融事故に該当するかということがポイントになります。

●損失補てんが許されるケース
金融事故として内閣府令で定めているのは、未確認売買、誤認勧誘、事務処理ミス、システム障害、その他法令違反といった類型ですが、為替デリバティブによる損失補てんが該当するのは、誤認勧誘かその他法令違反に該当するかということになります。

誤認勧誘は、商品の性質や取引の条件、価格の変動によるリスク等について、顧客を誤認させるような勧誘をすることをいい、商品そのものの性質に関する説明不足や誤った説明を行った場合や「必ず上がると思います」、「大丈夫です」などと言って勧誘し、取引によるリスクについて誤認させたケースなどが該当します。

顧客に損失補てんする場合には、あらかじめ内閣総理大臣(金融庁長官)に事故の事実を証する必要書類を提出し、事故の確認を受ける必要がありますが、下記のような場合には確認は不要とされています。
 ・裁判所の確定判決を得ている場合
 ・裁判上の和解が成立している場合
 ・指定紛争解決機関等のあっせんによる和解が成立している場合 など

そこで、銀行でも、顧客に損失補てんをしても良いと考えたときには、顧客に対して「指定紛争解決機関のあっせんをする」ように求め、顧客の方も、任意の損失補てんが難しいことは分かりますので、それでは全国銀行協会にあっせんをしてもらおうかということになる訳です。

●全国銀行協会のあっせん委員会への申立手続き
全国銀行協会のあっせん手続は、非公開で行われ、弁護士以外の人が代理人になることはできないとされています。そこで、依頼を受けた弁護士は事実関係を整理して、証拠とともにあっせん委員会事務局に申立書を送ります。

あっせん委員会利用は、銀行との間に紛争が発生しているということが要件とされていますので、銀行とどのようなトラブルがあるのか、銀行が顧客の要望に応じないということも述べる必要がありますが、一番肝心なのは事実関係です。

依頼者のお話をお聞きすると、事案としては、銀行が虚偽説明あるいは不十分な説明をして、顧客に安全な取引と誤認させたことが最も大きな問題のように感じるのですが、銀行の側は、形式的には説明を受けたという顧客が判をついた書類を持っていますから、説明義務違反だけを理由に争うのは実はかなり難しいのです。

訴訟ではないので、双方の言い分が食い違っている点については判断の基礎としにくいという事情があるからです。(あっせん委員会が心証を開示して、銀行側に翻意を求めることがあるのかもしれませんが、ほとんど期待できません。)

それでは、どこで決着をつけるのかというと、顧客の側に、問題になっている為替オプション取引についての適合性があったかどうかというのが最も重要なポイントになります。適合性があるというのは、顧客が当該金融取引を行う必要性があったのかどうかということです。

つまり、為替デリバティブはリスクヘッジのための商品ですから、海外貿易などで為替変動リスクを負っている企業であればデリバティブ取引を行う必要性は認められるので「適合性あり」ということになりますが、為替変動に影響されない企業の場合には「適合性なし」となるので、顧客側の言い分が通りやすくなります。

適合性がある場合でも、その会社の取引規模と比較して過大なオプションを買わされている場合には「オーバーヘッジ」といって、これも顧客保護の対象になる可能性があります。

銀行が、どうして為替リスクがない顧客に為替デリバティブ商品を買わせられたのかというと、直接海外貿易を行っていなくても、外国産の原材料などを利用して仕事をしていれば為替変動のリスクはあるのではないかというこじつけの論理で契約させていたということが分かります。

●完全な賠償請求は可能なのか?
このように銀行の側にかなり問題はあるのですが、形式的には書類は揃っているし、顧客の方も事業者ですから、何も分からない高齢者が被害に遭った場合などと同視はできません。そんなこともあって、あっせん委員会を利用して解決できた場合でも、最大損失額の半分程度と思っておいた方が良いでしょう。

それ以上に完全な賠償を求めたいのであれば、証拠に基づいて、説明義務違反の点も判断してもらえる訴訟を利用するしかないのだと思います。

あっせん手続で解決する場合でも更に踏み込んで訴訟でより多くの賠償を得ようとする場合も、事案を整理して適切に提示するのはかなり専門性を要するので、このような被害に遭われたときには、事件の依頼をするしないに関わらず、まずは経験のある弁護士に相談するのが一番です。

これで為替デリバティブのお話は終了です。
次回どんな内容を解説するかは、目下考え中です。ご希望があればお寄せください。

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