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「弁護士業界」勝手に解説-「為替デリバティブ損失とその解決」(2) [「弁護士業界」勝手に解説]

今回は為替デリバティブのお話の続きです。

為替デリバティブの中でも、分かりやすい為替オプションの解説を続けますが、顧客にオプションを買ってもらうためには、その負担を軽減するプランを提示することを考えて複雑な契約を提案することになるというところで終わっていましたので今回はその続きです。
前回のお話しはこちらです

顧客が銀行からオプションを買うためには「プレミアム」と呼ばれるオプション料が発生するのですが、それを消すために銀行が考えたのが、銀行が顧客から逆にオプションを購入する対価を支払うという方法です。お互いにオプションを買う訳ですからそのオプション料は相殺されて実質オプション料無料という契約をすることになります。

●為替オプションの仕組み
為替のオプションには「買い」のオプションと「売り」のオプションがあります、顧客が銀行から購入するのは外貨の「買い」のオプション(顧客が銀行から特定の価格で外貨を買える権利)ですが、銀行が顧客から買うのは外貨の「売り」のオプション(銀行が顧客に特定の価格で外貨を売れる権利)です。

例えば、顧客が銀行から3カ月後に100万ドルを1ドル100円のレートで購入できるというオプションを買った時に、銀行は反対に顧客から200万ドルを1ドル100円のレートで買ってもらえるというオプションを購入して、そのオプション料を双方が支払わないようにするというのです。(私が扱った案件では、オプション料の単価が違っていて、銀行は倍の金額を買ってもらえることになっていました。)

オプションを売るということは将来の価格変動に応じて一方的にリスクを負うことになる(オプションの売り手にとって有利な価格変動の時には買い手は権利を放棄してしまうので、儲けることはできません。)のですが、銀行は前回も述べたように、決済時期を見て独自に為替市場から外貨を購入することができますから為替変動に対処することが可能ですし、急激な円安(1割を超える価格変動)の場合には契約自体が無効になるという特約まで付けているので、銀行側のリスクは少ない訳です。

このような仕組みは、一見合理的なように見えますが、この取引は『契約後3年ないし5年先まで、3か月おきに外貨を売買する』という内容になっており、為替のプロでも予測できない数年先の為替レートを契約時点で固定して売買するオプションは、極めてリスクが高く、特にオプションの売り手の負うリスクは、理論上は無限に広がる恐れがある(オプションの買い手は、権利を放棄すればよい)ので、素人がオプションの売り手になるということは通常はあり得ないことです。

それが、顧客がオプションの売り手になってしまったのは、顧客に為替オプション取引というデリバティブ商品を販売しやすくするために、銀行側の思惑で、銀行と顧客双方がオプションの売り手になるという仕組みがつくられたからで、顧客のために作られたものではなかったのです。

顧客にとっては、オプション料の支払いを回避するだけの目的(この目的が明確に意識されていたのかも疑問です)のために、「ドル売り」のオプションを行使される無限定のリスクを負うことは全く想定外のことであり、銀行側からそのような無限定のリスクなどという説明がなされた形跡は見受けられません。

細かな経費を除いて単純化して説明しますが、銀行が100万ドルの「売り」オプションを持っているときに、円高が進行して、1ドルが100円から90円になったとすると、顧客は、市場では9000万円の価値しかないドルを1億円で買わなければならなくなり、その差額の1000万円が損失となります。

●最近の円高の状況と為替オプション契約
最近の超円高の状況は、この契約が締結された時期と比較すると1ドル30円近く円が上昇しており、先程の例に当てはめると、決済日ごとに3000万円ずつの損失が発生するので、本業でいくら儲けていても、その損失の負担に耐えられない企業が銀行相手に、この契約はおかしいと声を上げた訳です。

銀行がこの商品を販売した当時の思惑としては、円高が進行して為替差益で儲けるということは想定しておらず、顧客が支払う手数料を収益源にしようという程度の考えだったと思いますが、この契約が店頭における相対取引であったことから、顧客の損失は銀行の利益になりますので、「売り」のオプションを行使して顧客に割高の外貨を買ってもらうことになりました。

銀行担当者としては、思惑違いの利益ではあるものの、利益が上げられる状況で、その権利を行使しないということもできないので、お得意様であるはずの顧客に損失を与えることを承知で、オプションを行使してきたのです。

顧客としては、「そんな損失が発生するなんて話は聞いていない」、「きちんと説明されていないじゃないか」という不満は当然ある訳ですが、実際には、きちんと説明していなくても、「説明を聞きました」という内容の「承諾書」「同意書」といった書面を顧客からとっているのが一般的で、説明がなかったという主張がなかなか通らないという現実もあります。

そのようなときに、どのような判断基準で顧客が救済されるのか、次回は、実際に私が関わった、銀行協会のADRの手続面も含めて、解決に至る論理を解説いたします。

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