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「弁護士業界」勝手に解説-「弁護士費用のお話し」(5) [「弁護士業界」勝手に解説]

前回の予告通り今回は弁護士費用の考え方のうち『タイムチャージ』について解説します。日本では時間報酬という言い方をすることもありますが、要は時間単価による報酬額算定ということです。

●弁護士費用「タイムチャージ制」とは?
タイムチャージは、『1時間当たり○○円』という時間単価を決めて、依頼を受けた『業務に費やした時間×単価』で依頼者に弁護士費用を支払ってもらう方法で、欧米の一般的な弁護士費用の計算はこの方法に拠っています。(日本でも、企業関連の業務を中心に扱っている事務所ではこの方法が一般的です。)

タイムチャージの相場はアメリカでは300から500ドルくらいが一般的のようですが、トップクラスの弁護士であればこのタイムチャージが1,000ドル以上の高額になるので(クリントン国務長官の弁護士時代のタイムチャージが5,000ドルだったという話もありますが、真偽のほどは不明です)依頼できる人も限られてきます。日本の弁護士の場合には、1時間当たり2~3万円が一般的だと思いますが、中には1時間10万円を超える弁護士もいるようです。

●タイムチャージのカウントの基準
しかし、このタイムチャージを厳密にカウントするのは実は至難の業です。弁護士はいつも依頼を受けた事件のことを考えています。通勤途上で事件の解決のための素晴らしいアイディアを思いつくこともあれば、寝床についてもなかなか寝付かれずに、作成途中の書面の構想を思い描くこともあります。

ある事件で出張するために飛行機に乗って移動中に別の事件の資料を検討する時間があったとすると、その時間はどのようにチャージすればよいでしょうか。出張が必要な依頼者に移動時間分のタイムチャージを請求し、記録を検討していた依頼者にもその検討時間に相当するタイムチャージをするということもできないことはないということになります。

アメリカのジョークでこんな話があります。
自動車事故で死んだ40歳の弁護士が、天国で出迎えた神様に「私はまだこんなに若いのに、どうして死ななきゃならないんですか!」と訴えたのに対して、神様が「おかしいな。君の請求書によると、君はもう80歳くらいのはずなんだが・・・。」と言ったとか。
また、トム・クルーズが主演した「ザ・ファーム」という映画がありましたが、そこで主人公が勤務先の法律事務所の不正を暴く材料にしたのが、このタイムチャージの水増し請求だったのを覚えている方も多いと思います。
こんな話でも分かるように、アメリカではタイムチャージが不正に行われていると感じている人は少なくありません。

※※マスダのちょっぴり解説※※
ちなみにタイムチャージで事件を依頼するときには、ある程度弁護士費用を前払い(クレジット)しておいて、事件処理に費やした時間分をその前払金から引いて行って、残高が少なくなると、前払金を追加してもらうという方法をとることが一般的です。

●「タイムチャージ」適用が難しい理由
日本でもタイムチャージで事件の依頼を受ける弁護士はいると思います。私の事務所にもタイムチャージ制による報酬規定の定めはあるのですが、実際には、上に述べたような理由から『依頼者に納得していただける時間管理』が難しく、適用した例はほとんどありません。

依頼する側の立場では、事件の単価が高くても弁護士がそれに費やした時間が短ければ高額の報酬を支払うことに疑問を持つことがあると思います。私たちも、想定よりも少ない作業量で結果が出たときに、当初約束した報酬金額をそのまま支払っていただくのは気が引けるので、幾分減額することはありますが、その場合も基本は当初の約束に基づいて算定した金額が元になります。

請求する側の事件であれば、目の前の事件を解決しなければ事業が先に進められないとか、多額の債権を早期に回収したいという事情があることも多いので、訴訟になって解決まで1年以上の時間を要するよりも、1か月くらいで早期に解決できることに価値があることもあります。このような場合に、当事者レベルでは解決できない事件を弁護士に依頼して早期解決できることの価値は、弁護士がその事件に余計な時間をかけないことによって得られるのですから、必ずしも多くの手間をかける事件処理に価値がある訳ではないということはご理解いただきたいところです。

●マスダの考える「新しい」タイムチャージの考え方
ただ、最近ご依頼いただく事件の中には、『従来の報酬基準では算定困難なもの』が増えてきていますので、その場合にはタイムチャージの考え方を導入する必要があるのではないかと考えています。

例えば、遺産分割に関する事件で、関係者の利害調整をして合理的な分割案を取りまとめて欲しいという依頼があります。従来の考え方で行けば、このような事案であっても、相続人の中の特定の人が依頼者となって、弁護士はその依頼者の代理人としてその依頼者の利益のために活動するという前提で弁護士費用を計算します。その場合の弁護士費用算定の基礎は、その依頼者が相続によって得られる遺産額です。

この考えによると、相続人が多数の事案では、相続人全員との調整を考えると、相続人の数によって分割されて依頼者の取り分が少なくなっても、かかる手間と時間は逆に増えることになるので、従来の考え方で弁護士費用を決めることの合理性は殆ど見出せません。かといって、この事件をタイムチャージで算定するといっても、前述のように時間管理が難しいという問題があります。

そこで、新しい報酬額の決め方として、依頼を受けた事案処理に必要なそれぞれの業務に要する標準作業時間を設定して、それに時間単価を掛けて報酬額を概算するという方法を考えています。
例えば、関係者に必要事項を通知するためにA4用紙2枚以内の通知書作成に要する時間を1時間とか、訴訟事件になれば事件記録の検討も慎重に行う必要があるので、準備書面作成に要する時間を3枚以内で2時間とするなどの計算方法で、想定する作業時間を積み上げて行って、事件に要する弁護士費用の見積もりを作成するという方法です。

この方法は、建築やIT関連の現場で働く人の人件費計算で用いられている「人工(にんく)」の考え方と同じようなもので、業務処理を時間換算することの可能な仕事では一般的に行われていることなので、説明しても理解されやすいでしょう。

この概算による時間報酬に従来の事件単価を基準とした報酬の考え方を組み合わせて、新しい報酬システムを考えることができるのではないか思っています。

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こんな考えを基本として、現在、私自身の報酬の考え方を変更すべく検討中なので、その成果は後日改めてご報告したいと思います。その際には、標準作業時間の考え方にご意見をいただければとも思っていますので、宜しくお願いいたします。

次回は、欧米の損害賠償請求事件で採用されることが多い完全成功報酬制度(フルコミッション)について、弁護士がどのように考えているのかを解説してみたいと思います。

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